何を食べても美味しかったシチリア。
旅したのは2年前か。イワシボールのトマトソース煮、カンノーリというリコッタチーズ を詰めたお菓子、アーモンドミルクなどなど。
たかだか、5日ほどいただけなのに、美味しかったものを挙げるとキリがないほど。
シチリア料理の印象は、美食家のための食事ではなく、風土の息吹を吸った食材が嗅覚を圧倒するもので、それは息をつくのを忘れてしまうほどに美しい景色を見ているのに似ていた。
シチリアの旅で特に記憶に残っているものの一つがマグロのステーキの甘酢玉ねぎがけ。
調べたところ、調理法は玉ねぎをお砂糖とお酢で甘酸っぱく味付けし、マグロのステーキにからめたシンプルなもの。
いつか家で再現したいなぁと思っていたところ、ちょうど美味しそうなマグロを手に入れた。
日曜日のお昼はマグロのシチリア風で決まりだ。
料理ができあがってドキドキしながら、マグロを一切れ口に入れてみた。
うーん、違う。
悪くはないれど、こんな味ではなかった。
味覚と嗅覚に一気に押し寄せたあの香味の記憶をたよりに、思いはシチリアへと向かう。