パレルモを発ち西へ。
ワインでは最近有名になっているけれど、観光という点ではあまり注目されていないアルカモという街から車で15分の丘の上にある民宿にやってきた。
夕暮れ時、庭の前にはアルカモのため息が出る美しさの景色が広がっていた。
予約すればもとレストランを営んでいた宿の奥さん、ステッラさんが夕食を用意してくれる。
前菜は、地元でできた羊のリコッタチーズに、スフィンチョーネというシチリア版ピッツァや、ミントがのった茄子のグリルなど。
スフィンチョーネには玉ねぎ、トマトソース、ペコリーノチーズにオレガノがのっている。パン生地はトマトの水気やオリーブオイルを吸っていて、しっとりと柔らかく、味は濃厚。
どれも勿論美味しいけれど、特にリコッタが甘くて絶品だった。
ウイキョウのヒゲと新鮮なイワシのパスタは、シチリアを代表するお料理の一つ。
干しぶどうと砕いたアーモンドが入っている。
素材は殆どが地元で採れたもの。ウイキョウやオリーブオイルは畑で採れる。
食事の前にお料理をする様子を見学させてほしいと頼むと快諾してくれた。
他にもマグロのトロを使ったパン粉焼き等、お腹いっぱい。
食事の間はスッテラさんの旦那さんのアントニオさんがずーっと郷土料理のお話をしてくれた。
食後ももてなし好きな二人との会話は途切れることなく、コーヒーや食後酒を飲みながらマルサラ酒で財を築き3代目で全てを失った地元の名家の話や、ペコリーノチーズの作り方の話などに耳を傾けながら夜が更けていった。
あぁ、なんて豊かなんだろう。